以前、フトアゴヒゲトカゲ用の木製ケージして以来、ケージのレイアウトを変更したりもしましたが「限界」を感じていました。
そこで今回はケージのレイアウトをもっとワイルドにするべく、擬岩バックボードを自作に挑戦していきます。上手くいけば野性味溢れるワイルドでロマンのあるケージになるはず!
なお爬虫類用の擬岩ですが、アクアリウムや水槽でもご使用になれるように手順もご紹介しますのでご安心ください。
擬岩の自作に準備するもの
今回擬岩バックボードをDIYするにあたり、準備したものを紹介します。
- スタイロフォーム(厚み20mm)
- スチロールカッター
- 造形モルタル
- 下地セメント
- 水性塗装液各種
スタイロフォーム

スタイロフォームはケージ内の圧迫感を軽減させるため、厚み2cmのものを使用します。
後述しますが、素材は薄めの方が加工や細部までこだわれるので、これで良かった気がします。

スチロールカッター

当初カッターで加工しようしたところ、熟練者達は「スチロールカッター」を使用していたので擬岩バックボードを自作するにあたり購入。
また新しい木製ケージを自作する時にも使えそうなので、用途の幅が広がりそうです。
造形モルタル(セメント)

造形用モルタルには「ギルトセメント」を使用します。このセメントは擬岩を始めとして造形用に開発されたモルタルです。
採用した理由は、プロや業者だけでなく擬岩を自作している多くのが方が使っている実績があるだけでなく、エイジングさせることで細かなディテールにもこだわれる点です。
下地用モルタル(セメント)

ギルトセメントをスタイロフォームに直塗りすることも出来るそうですが、どうやら接着しづらいらしく、対策を考えていたところ造形モルタル専門ショップにて紹介されていた「ニューサンドモルタル」を使用することにしました。
このモルタルは下塗り用として使われるセメントで、ギルトセメントを組み合わせることで真価を発揮出来るとか。
ギルトセメントやニューサンドモルタルを始めとした造形用モルタルはホームセンターの品揃えが悪いため、予めネットで購入することをオススメします。
水性塗装剤

塗装剤なんてどれを選べばいいか分からなかったので、見た目だけで適当に選びました。
「ミルクペイント」という、この塗装剤は森永乳業製の乳由来の安全な塗装剤だということで、爬虫類のバックボード用に安心して使えそうです。

自作する擬岩バックボードのラフ画

制作に移る前に作品の完成度を上げるため、脳内のイメージをラフ画として抽出してみました。

やはりイメージを具現化させることは大切ですね。ラフ画を書いただけで一気に完成図が思い浮かんできました。
この勢いで一気に完成させたいと思います。
自作擬岩バックボードの作り方
それでは擬岩バックボードを自作しながら作り方をご紹介します。
擬岩の自作工程は以下のとおり
- スタイロフォームのカッティング
- 擬岩の基礎となる形作り
- 下地用モルタルを塗る
- 造形用モルタルを塗る
- エイジング加工を施す
- アク抜き
- 下塗剤で塗装
- 水性塗装剤で塗装
- 完成
はぇ~すっごい簡単そう…
スタイロフォームのカッティング

まずは自作ケージの横幅と縦幅を計測し、スタイロフォームをカッティングします。

カッティングのコツは定規でしっかり固定し、一気にカットすることです。
さらに完成後、バックボードを設置しやすいように計測した寸法より1cmほど短くすることをオススメします。
なぜならモルタルで造形するため、最終的な実寸は数mm大きくなるからです。

無事カッティングし終えました。
スタイロフォームを仮止めしたいとろこですが、この自作ケージには致命的な欠陥がありガラス引き戸を取り外すことが出来ません。なのでこのまま作業を続行します。
擬岩作りをはじめ、ケージの自作などでも大型の定規は頻繁に使います。
私は1m・30cm・15cmの各種定規を持っていますが、擬岩バックボードを自作する際、1m定規だけは絶対に持っていおいたほうが良いです。
なぜなら1.8mものスタイロフォームをカットするため、作業効率と正確性が段違いになります。
擬岩バックボードの基礎を作る
カッティングしたスタイロフォームに足場や高台などの基礎部分を作り込んでいきます。

カッターの先端は超高温になり、有害なガスを発します。
必ずマスクと手袋を着用し自作しましょう!

スタイロフォームをカットし大まかな接着場所が決まったら、マジックなどでだいたいの位置を決めます。
今回は寝床・高台01・高台02の計3箇所。

高台などの大きな場所を作る前に、その足場となる場所を作ります。
足場から作ることで安定し失敗も少なくなるからです。

切り抜いた足場を多用途ボンドで接着し支柱を作ります。
より立体的に且つ自然的に見せるため、柱の中間を細くし両端を太くすることで一気に深みを増します。
ぶっちゃけ接着できればどんなボンドでも問題はありませんが、私は以下のボンドを使用しています。

発泡スチロール同士だけでなく、木材と鉄を固定できるため日常のDIYで重宝するアイテムです。
完成した擬岩バックボードの基礎

接着とカット作業を繰り返し、3時間ほど乾燥させて完成しました。
こだわりは流木一体型バックボードだという点。

本来はこの流木を組み込んで基礎を作りたかったのですがサイズの都合上断念しました。

とくにフトアゴヒゲトカゲは立体的行動が好きなので、高台と経由する足場があります。

フトアゴが登りやす勾配と幅を確保し、バックボードづたいに寝床へいけるようにしています。

さらに就寝スペースの下にはシェルターを設置してみました。しかし、くりとり氏はシュルターと無縁の生活をしてきたため、使用してくれるかは不明です。

そしてより立体的に見せるため、端材を壁に貼り付けることでモルタル造形した後の陰影を付けやすくしておきました。
フトアゴヒゲトカゲがここで生活することを考えながら作業するだけで、ワクワクが止まりません。
下地用モルタルを使う
さてここからが本番の「モルタル造形」を行います。

まずは造形用モルタルをスタイロフォームに接着しやすくするため、下塗用の「ニューサンドモルタル」でコーティングしていきます。


セメントに水をを混ぜてモルタル化させるのですが、素人なので分量は適当です。混ぜる方法は道具もあるみたいですが素手で十分でした。
セメントの主成分は石灰であり「アルカリ性」です。素手で混ぜる場合、必ず手袋を着用しましょう。最悪皮膚がただれる危険性があります。

下塗り用モルタルを塗る際のコツは「手塗り」です。
初めはハケで塗っていましたが、細かいところまで塗れないこと・効率が悪いことから手塗りを試した所、時間効率も良く細かな部分まで融通がきくのでオススメです。

あくまで下地なので、造形用モルタルが接着しづらそうな場所にコーディングしたら完了です。若干塗り残りがありますが問題ないでしょう。
下地モルタルが乾燥させる

完全に乾燥させるため丸一日天日干しさせたら完成。だいぶ完成図見えていました。
造形用モルタルを使う
次はモルタルで造形していきます。


ここでも必殺技・手塗りを使いモルタルをバックボードに塗装します。造形用モルタルを効率よく塗るコツとして、モルタルの粘度は少し緩め位が丁度良いです。

塗り忘れがちなシェルターの裏や階段の下もしっかりと塗装しましょう。
やはり下地用モルタルを塗ったおかげで造形用モルタルの接着が非常に容易でした。

さらに仕上がりの立体感をリアルにするため、余分なモルタルを手で削り取りエッジをきかせます。

次に表面に付着した砂利や手で削りきれないモルタルを刷毛で取り除きます。
それを3時間ほど乾燥させ生乾き状態にさせます。
エイジング加工を施す
しかしこの状態では人工的な擬岩感が残っているため、ここからエイジングさせていきます。エイジングとは傷や不規則に模様をつけ、よりリアルにする作業です。

さらに造形用モルタルを追加し、たわしでエイジングさせます。
たわしを使う理由は、入手が容易なこと・無規則な模様を簡単に付けられるからです。

おおまかなエイジングが完了したら、手を使いエイジングさせます。
たわしには出来ない細かな質感にこだわれ、簡単に出来るのでオススメです。

エイジングする際のコツは、軽い力でポンポン叩きながら行うことにより、より自然でリアルな質感になります。
造形モルタルを乾燥させる

丸二日かけて完全に乾燥させたらモルタル造形は終了です。

たわしと手でエイジングさせたことにより、のっぺり感がなくなり岩っぽくなってきました。
しかし、私の理想には届かずこれからも研究が必要ですね。
アクアリウム用にモルタルのアク抜きをする
今後アクアリウムやテラリウムに流用する可能性もあるため、モルタルのアク抜きをします。
この工程は爬虫類のケージのみで使用する場合、飛ばして大丈夫です。

「アクアマリン」というセメント用アク抜き薬剤使用し、本来は水2:原液1の割合で水に沈めて使うそうですが、バックボードが大きいため原液をハケで塗る方法をとります。

薬品を塗ったモルタルから大量の気泡がでてきました。これがセメントの「アク」のようで、一度アク抜きをした場所に再度塗っても気泡が出ることはありませんでした。
アク抜きが完了したら、真水で薬品を洗い流し再度乾燥させます。
なお商品の説明に書かれていないアク抜き方法(今回のような方法)を行った場合、水槽の生体の生死は保証できないそうなので自己責任でお願いします。
水性下塗り剤(シーラー)を塗装
擬岩にペインティングする前に「シーラー」と呼ばれる塗装剤で下塗りを行います。
シーラーを下塗りするのには意味があり、後で塗る塗装剤とモルタルの密着性を高めるためです。
上塗りする塗装剤は密着性が低く、シーラーはその中間素材になり、より密着させてくれます。(イメージとしては両面テープのような役割)
今回は爬虫類のケージ内(屋内)で使うため「水性シーラー」を使いますが、屋外で使用する場合「油性シーラー」を使いましょう。
油性シーラーに水性塗装剤を塗ることも可能です。

アク抜きと同様にハケを使いシーラーを塗装していきます。下塗りのコツとして、まずは大雑把に全体をコーディングしてから細部まで塗装するのがオススメです。

どうやらモルタル造形の深くまでシーラーが染み込んでしまうらしく、シーラーを大量消費してしまいました。
シーラー塗装が完了したら再度バックボードを乾燥させます。
真夏の場合シーラーを完全に乾燥させるには3時間かかり、真冬では6時間以上掛かります。
下塗りと本塗りはその日中に行うのが理想的なため、朝から塗装するのがベストです。
ベースカラーを塗装

まずは擬岩のベースカラーになる色を塗装をします。

ホワイトでキレイな美しいバックボードにしようと考えていましたが、自作ケージのSPF材が無垢の木色なのでアクセントを付ける意味で「黒寄りのグレー」にします。

塗料を合成する際は同じ明度・彩度の色を作るのは難しいのでかなり多めに作っておきましょう。(なおそのミスを犯した模様)

まず刷毛を使い大雑把に塗り、後から塗り残しを潰していく感じで塗装します。そうすることで効率的に塗装可能です。

シュルターや階段部分はハケが届かないため、ここでも秘技・手塗りで塗装します。
ベースカラーの着色完了。塗料がマットな質感だったのでいい感じに仕上がったと思います。
またベースカラーの塗料は一番量の多いものを選ぶのが理想です。擬岩の凹凸に吸われ、かなりの量を消費するためです。
エイジング塗装
さらに立体的で現実風のテクスチャを作り上げるために「エイジング塗装」をします。
エイジング塗装とは、ベースカラーとは異なる色を入れ陰影や奥行き、使用感やダメージ感を出すことでよりリアルな質感に近づける塗装方法です。

まずエイジング塗装しやすいように刷毛を「ドライブラシ」と呼ばれる状態にします。
雑巾で刷毛に着いた余分な塗料を削ぎ取り、軽く触っただけでは色移りしない位までインクを取ります。

そしてドライブラシで擬岩の表面を軽く撫でるようにするだけでエイジングが出来ます。方法さえ分かってしまえば超簡単なのです。

さらにピンク系カラーを入れ、その上から何度も塗装を重ねエイジングしていくことで、画像のような自然な質感に仕上げることも出来ます。
エイジング塗装は非常に手間が掛かる工程ですが、これをするかしないかで仕上がりが段違いに変わってきます。
擬岩バックボード完成
2時間ほど掛けエイジング塗装のディテールを作り上げたものがコチラです↓
光が当たる場所には明るい色を入れ、影になる場所には黒を入れることで塗装する前とは別物レベルの擬岩バックボードになりました。

エイジング塗装にこだわったことで、処女作にしてはかなり満足行く出来になりました。
しかし不満が残る箇所もあったので、今後の擬岩バックボードの自作に活かしたいと思います。
擬岩バックボードを使ったケージレイアウト
完成した擬岩バックボードをフトアゴヒゲトカゲの自作ケージに入れ、レイアウトを変更し、合わせてフトアゴヒゲトカゲの反応を見ていきたいと思います。









擬岩の自作に掛かった材料費
最後に擬岩作りに掛かった材料費をご紹介します。
- スタイロフォーム1枚 900円
- スチロールカッター 4000円
- 接着用ボンド(特大) 2000円
- 塗料3色 4000円
- 刷毛7本 2000円
- 使い捨てペイント容器10個入り 600円
- 下地用モルタル(ニューサンドモルタル) 2500円
- 造形用モルタル(ギルトセメント) 2500円
- セメント調合用バケツ1個 600円
- ブルーシート1枚 1000円
合計金額:21,100円
バックボードを作るだけのはずが、自作ケージ以上の金額が掛かってしまいました。
しかしスチロールカッターや塗料は初期投資として購入しておけば、今後の擬岩バックボード作りで無限に使い回せるので、値段以上に良いものが出来たと思います。
ですが大容量ボンドを全て使い切ってしまっとことなど様々な問題点が多く、今後の課題ですね。
まとめ
以上が爬虫類・アクアリウムに使える擬岩バックボードの作り方でした。材料と時間さえあれば誰でも簡単に作れます。
私が理想としていた擬岩には届きませんでしたが初めての作品にしてはよく出来た方かと思います。今後も擬岩の作り方を研究し、より完成度の高いバックボードを作りたいと思います。
制作時間:4日間
材料費:21,100円
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