前回は「自作ケージの設計図の作り方」についてご紹介しました。
その設計図を元に、塗装から組み立てまでを一気にやっていきましょう。
これから爬虫類のためにケージを自作しようと考えている方のために、手順やコツ・簡単な作り方を丁寧に解説していきます。

目次
まずは作る手順を考えよう!

今回自作する木製ケージは幅90が連結した形になるため、H163cm×W181cmと非常に大型となり作る手順をしっかり考えることが重要になります。
熟考の末、自作する手順は以下のようになりました↓
- 木材のヤスリ掛け
- 木材の塗装
- ケージの土台と基礎を作る
- 擬岩バックボードを作りはめる
- ケージの本体部分を組み立てる
- 完成
③と④以外は通常通りの作り方ですが、擬岩バックボードをはめ込むサイズの都合上収納と本体を分けて作ることになりました。
また並行して作る擬岩バックボードの作り方は別途記事で紹介していますので、今回の記事では省略しています。

それではさっそく自作ケージの簡単な作り方をみていきましょう!
木材を塗装しよう!
前回解説した通り、家具と言っても遜色ない大きさとなるためオシャレな雰囲気となるよう「木材の塗装」を行います。
塗料は「ワトコオイル」と「ブライワックス」を重ね塗りします。
ワトコオイルで木目を強調させ深みを出しつつ、ブライワックスで木材に膜を作ることで耐水性と劣化耐性付与させます。
手間は二倍ですが2つの塗料いいとこ取りが出来、時間を掛けるだけの価値があります。

集成材のヤスリ掛けと塗装にあたり、塗装マスクと防塵マスクを用意しました。これで木クズが肺や目に入らず、塗料の強烈な臭いを対策します。
参考:「爬虫類ケージの自作に必要な工具」

ヤスリ掛け
今回の爬虫類ケージには2100mm×500mmのパイン材の板を8枚使うため、ヤスリ掛けも膨大な時間が掛かると思いマキタの「電動サンダー」を購入しました。
マキタは値段こそ高いものの職人御用達の信頼あるブランドで、私は可能な限りMakita製品で統一する位オススメです。

ヤスリは240番を使い木材の表面を整えます。
ヤスリ掛けし表面のムラを無くすことで、塗料が浸透しやすくなり色ムラが発生しづらく仕上がりが段違いに良くなります。

ヤスリ掛けを終えたら表面に付着した木くずを「ウエス(布)」で拭き取りましょう。
木くずをしっかり拭き取らないと塗装後ザラつきが出来て美しく仕上がりません。
ワトコオイルで下塗り塗装
次にワトコオイル(色:ミディアムウォルナット)で塗装していきます。

塗装のコツは刷毛(ハケ)から液垂れするほどワトコオイルを付けず、塗料入れのフチで液を絞ってから塗ること。
ワトコオイルは木材に染み込んでいくため、一度に多く塗ろうとした場合一部分だけが濃くなり色ムラが出来てしまいます。
自作するケージの雰囲気を考慮し、かなり薄く塗っていますがワトコオイルの量を調整することで濃淡の調節が可能です。

塗装後15分~30分程乾燥させたら一度ウエスで拭き取ります。
この作業は染み込みきらなかったワトコオイルや、木材内部から浮き出た汚れを拭き取ることで仕上がりをキレイにするためです。場合によっては1時間立っても汚れが浮き出てくることもあるので確認しておきましょう。

ここから完全に乾燥させるため、24時間以上放置し乾燥させます。
今回はブライワックスを重ね塗りするため、本来の工程を省きましたがワトコオイルのみで塗装する場合、公式サイトで塗り方が紹介されています。
ブライワックスで仕上げ塗装
最後にブライワックスで仕上げ塗装を行います。ブライワックスなどの「造膜系塗料」を塗ることで、木材が守られるだけでなくワトコオイル(ステイン)と合わせると美しい光沢と深みが出ます。
爬虫類の爪跡やひっかき傷・水滴にも多少の耐性出来るのでオススメの組み合わせです。

まず「スチールウール」でブライワックスをすくい取ります。
布で塗ることも可能ですがブライワックス専用の「スチールウール」を使うことで誰でも失敗なく簡単に塗装出来ます。

次にワトコオイルで塗装したパイン集成材にブライワックスで重ね塗りします。
塗り方のコツとして、スチールウールを折りたたみ「山」となった膨らみを使い、木材にすり込むように塗るとキレイに仕上がります。

塗装後15分ほど放置し乾燥させたら仕上げに「豚毛ブラシ」で木目に沿ってブラッシングします。
ブラッシングすることで余分なワックスが取り除かれ、表面が光沢を帯び肌触りもツルツルになります。
私は革靴のお手入れ用に余っていた豚毛ブラシを使っていますが問題なく光沢が出ました。
豚毛ブラシが最も推奨される理由は豚毛に「ハリとコシ」があるからです。そのおかげで毛先が木材の凹凸部分までしっかり入り込んでくれます。

塗装中も細心の注意をしていましたが木材に色ムラやダマになっている箇所を多数発見。

ブライワックスの色ムラを無くす方法は簡単で、乾いた布を強く擦り付けるだけです。

画像のように乾燥してしまった状態でも、ブライワックスなら簡単に色ムラを拭き取ることが出来ます。
しかし擦り過ぎることで高温の摩擦熱により、ブライワックスの造膜層が剥がれてしまう可能性があるためヤリすぎには注意です。
ワトコオイルにブライワックスを重ね塗りした前と後の比較

右:ワトコオイル(ミディアムウォルナット)のみ
色見本を比較して分かる通りジャコビアンを塗ることで、なんとも言えない深みのある色になりました。あぁ~いっすねぇ~^
この木材を使った自作ケージの中で爬虫類達が生活することを想像するだけでワクワクが止まりませんね。
収納一体型爬虫類ケージを組み立てよう

塗装に1週間以上掛かってしまいましたが、塗装さえ終われば設計図通りに組み立てケージを作るだけの簡単な作業です。
ざっくりとした「収納一体型爬虫類ケージ」の自作手順はこうなります↓
- ケージ台(収納)の組み立て
- 爬虫類ケージ部分の組み立て
- 天井面の組み立て
- 側面の組みたて
- 本体の組み立て
- ダボでビス(ネジ穴)を隠す
- 完成
はぇ~すっごい簡単そう…
ケージ台(収納スペース)
まずはケージの基礎となるケージ台から製作していきます。
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まずは収納となる板材を固定するため、側面から垂直に長ネジを使いビス留めしていきます。

フトアゴヒゲトカゲの飼育用品やDIY工具を大量に収納するため、大型L字金具で下から補強します。
今回は塗装した色とマッチするようにアンティーク調のL字金具を選んだのもポイントです。

棚板がズレたり計算が間違っていたりと色々ありましたが、無事ケージの土台が完成。
想像していた以上に色味が美しく、素晴らしい雰囲気となり大満足。やはりブライワックスの効果が大きかったですね。
土台だけで総重量50kg以上あり、大人二人で4時間以上掛かりました。
木製ケージ本体
次は木製ケージにあたる部分を作っていきます。
木製ケージ本体は以下の3工程に分けて製作していきます。
- 天井面(金網)
- 側面(サイドガラス&アルミパンチング)
- 本体の組み立て
最も難易度が高いケージ台の製作が完了したため、後はケージを作るだけの簡単な作業です。
ケージ天井面(金網)

まずクランプで固定しながら仮組みします。

ビスで固定したら骨組みの完成です。
中央の2本の棒は暖突を設置するための支えとなります。

さらに天井の金網にはバスキングライトや紫外線ランプを置くため、耐荷重を考慮し金具で補強しておきました。

最後の仕上げに金網を張り、タッカーで固定します。
タッカーは木材にも使える強力なホッチキスであり、DIYの幅が広がるので1つは持っていおきたい工具ですね。

タッカーを使ったことにより簡単に金網の固定が出来ました。
設計図の段階では蝶番を使い開閉式にする予定でしたが、スペースの都合上断念。次回爬虫類ケージを作るときに試してみようと思います。
ケージ側面
次に木製ケージの側面を製作します。
アルミパンチング(3mm)とサイドガラス(3mm)をはめ殺し窓にするため、「トリマー」を使い溝切り加工を行います。

トリマーも一つあると面取りや溝切りが出来、DIYの幅が広がる工具の一つです。

まずは深さ3mmの溝を掘るため、スコヤを使いストレートビットの長さを調節します。

初めて使うトリマーでしたがどうにか溝切りを終えました。
しかし木製ケージの自作をする中でダントツで危険な工具なので、しっかりと使い方を学んだ方がよさそうです。

仕上げにフォスナービットで配線穴を開けておきます。配線穴があることでコード類をキレイに隠せるためレイアウトがスタイリッシュになりオススメです。

次は通気口としてはめ込む「アルミパンチング」をカッターで加工します。
1mmでもズレるとハマらなくなるため、ここは全神経を集中させ加工します。

アルミパンチングはカッターで簡単にカットや加工が出来るので通気口として優秀な素材ですね。

無事1mmのズレもなく側面が完成しました。
我ながら大満足の完成度。やはりアルミパンチングを採用したことにより木材との調和がとれオシャレな感じなったと思います。

ケージ部分
次は木製ケージの本体にあたる部位を作っていきます。
側面と天井は完成したため、後は組み立てるだけの簡単な作業です。

まずは側面と正面をフレームでつなぎ組み立てます。これでケージの基礎が出来ました。

次にOSB材を使い背面を組み立てます。
OSB材を使う理由は「コスト削減」です。背面は擬岩バックボードで見えなくなるため、手抜き出来るところは徹底的に手を抜きます。

最後の仕上げにガラスレールを取り付けます。
下段は両面テープ、上段は耐久力を重視し多用途ボンドを使用します。

ガラスレールは「金ハタ」を使い固定します。私は2つしか持っていませんが、幅90cmケージを自作する場合3つはあった方がよいです。

レールが接着したらフロントガラスを取り付けます。
今回は「引手加工」と「エッジ加工(角磨き)」したので安全面と機能性が飛躍的に向上しています。
引き戸ガラスを自作する場合、取り外し可能にするため乗り越え高さを必ず計算しましょう。
使用するレールによりますが高さを-6mmすれば丁度いい感じになります。
Youtubeで引き戸ガラスの作り方に関する動画があり、非常に参考になります。
ダボでネジ穴を隠す
最後の仕上げにケージ正面をスタイリッシュにするため、「ダボ」を使いネジ穴を隠します。

画像で比較して分かる通り、市販ダボと「自作ダボ」では見た目に大きな違いが生じます。
そのため共木(同じパイン集成材)からダボ木を自作します。
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埋木錐のサイズを選ぶ場合、使用するネジ頭の直径を確認しておきましょう。8mmと10mmを揃えることをオススメします。

共木から自作したダボ木がコチラ(長さ10mm)
このダボを使い木製ケージのネジ穴を埋めスタイリッシュにしています。

初めに「ダボ錐」を使いダボ穴を開けておきます。

次に自作ダボ木をトンカチで埋め込みます。

余分なダボは「アサリ無しノコ」でカッティングします。
アサリのあるノコギリを使った場合、ダボ周辺の木材に傷が入り見栄えが悪くなってしまいます。ダボ埋め専用の「アサリ無しノコ」を用意しましょう。

ノコギリではカットしきれなかったダボの出っ張りは「ノミ」を使い調節しましょう。


ヤスリを掛けたらブライワックスを綿棒で塗装し、爬虫類ケージの完成です。
完成した爬虫類用自作木製ケージ
組み立てに20時間以上掛かりましたが、無事「爬虫類用自作木製ケージ」の完成!
では完成した爬虫類ケージを見てみましょう。

ブライワックスとワトコオイルで塗装したことにより、想像以上に深みのある美しい木製ケージになってくれました。
このアンティーク感がたまらないッ!

画像では伝わりづらいですが、幅1810cm×高さ163cmと超大型爬虫類ケージとなっており、実物は非常に大きいです。

これだけ巨大なケージなので収納棚も大きく、今まで収納に困っていた工具や塗装用品、フトアゴヒゲトカゲのグッズやデュビアの餌も全てスッキリ収納出来ました。
まとめ
以上が大型木製ケージの自作でした。
計画から完成まで2週間以上掛かりましたが大変満足いく爬虫類ケージが出来ました。
この自作ケージを使った「ケージレイアウト編」と「擬岩バックボードの自作編」も合わせてご覧ください。

